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2008.08/14(Thu)

変貌する民主主義 

変貌する民主主義 (ちくま新書 722)変貌する民主主義 (ちくま新書 722)
(2008/05)
森 政稔

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民主主義の歴史を振り返り、民主主義とはなにかを考察する書。結論から言うと、必ずしも、それに成功したとは言い難い。それほど、民主主義とは曖昧で、判然とせぬものなのかも知れない。

本書はわかりやすいように、「自由主義と民主主義」「多数と差異と民主主義」「ナショナリズム、ポピュリズムと民主主義」と章立て、対比して述べられている。わかりやすいようにと言っても、この書は難解である。新書ブームに乗って、新書でも読んでみようと気軽に手に取ると、泣く。

本書を読めば、「民主主義=神の正義」などという誤解は解けるはずだ。もっとも、最近はみんな民主主義にうんざりしているので、そのような誤解は存在しないかも知れないが。

なぜ、民主主義は色褪せてきたのか。本書では繰り返し、民主主義は適用領域を定める必要があると説く。学級会で「見て良いテレビ番組」を民主的に決定したりするのは、民主主義の逸脱、行き過ぎた民主主義である、と説く。ハイエクの議論のところでは、民主主義は社会一般のルールを定めるものに限定されなければならない、一般のルールとは法である。法は特殊利益を考慮しない。しかし、現在の民主主義では、立法府を通過したものなら、なんでも法だとみなされる。郵政選挙の残滓どもによって、なんでもかんでも通過してしまっている衆議院を見ると、民主主義が虚しくなるではないか。

面白かったのは民主主義と民主制の違いである。デモクラシーとは統治形態である。民主制と訳すのが正しい。民主制とは、君主制や寡頭制と並列な制度であり、君主主義や、寡頭主義がないように、本来ならば、民主主義も存在し得ない。事実、democracyにismは付かない。なのに、なぜ、民主主義というのであろうか、余はこの点が不思議でならなかった。本書にはその理由が説明されていた。以下の通りである。
「民主主義を機能させるためには、なぜ多数に従わなければならないのか、という認識が必要である。共同体の決定を無意味にしないため、等、理由があるなかで、もともと、フィクションとして語られていた多数が、ある時、実数としての多数に変化した。民主主義が主権という考え方を取り入れたからである。主権とは、王が法の支配を超越するために用いた概念である。ボダンの民主主義論では、この主権の概念を借用して、人民に用いたのである。これにより、人民主権という概念が生まれた。デモクラシーと人民主権が融合して、デモクラシーは単なる統治形態を指す言葉から、統治の正当性を指す意味に変わった」

時々ポピュリズム批判が起こるが、上記の理由から、ポピュリズムと民主主義の違いはない。ポピュリズム批判が万人に支持されれば、ポピュリズム批判こそがポピュリズムに乗っかって行われていることになる。ポピュリズムを批判することは、民主主義を批判することであると気付くべきである。

民主主義は国民を生み出した。国民は戦争を王侯や貴族から奪い、総力戦にしてしまった。アメリカは民主主義を用いて他国に攻め入り、「民主主義による平和」を謳っている。民主主義はセコいのである。さらに、民主主義によって平和をもたらす、と言って攻め入り、戦争の原因を非民主主義の国に負わせてしまう。民主主義は単に開戦の正当化を目論んだものに落ちた。

グローバル化により、一国の中で完結しない世界では、時間と空間に影響される民主主義は不都合なものである。たとえば、地球は子々孫々のものであるにもかかわらず、民主的に資源を枯渇させることが出来る(もちろん、民主的に護ることも可能ではあるが、それは後生の民主制を否定する、パターナリスティックなものである)。これは、時間的なものに、民主主義が機能しないことを意味する。また、アメリカ国民の民主的決定により、アフガンの民やイラクの民が生活を虐げられ、命をも奪われる(もちろん、アメリカの民主主義により、イラクに侵攻しないと決めることも可能であるが、それほどアメリカ国民は偉いのか)。これは、空間的なものに、民主主義が機能しないことを意味する。アメリカがどれほど民主主義を叫ぼうとも、イラクの民に決定権はなにもないのだ。

アメリカの民主主義については、なぜ国家は衰亡するのかを参考にして欲しい。

噛めば噛むほど味が出る書ではあるが、いささか難しい。

オススメ度: レベル4
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