03月≪ 2017年04月 ≫05月

123456789101112131415161718192021222324252627282930
--.--/--(--)

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
【編集】 |  --:-- |  スポンサー広告  | Top↑
2008.08/26(Tue)

ある異常体験者の偏見 

ある異常体験者の偏見 (文春文庫)ある異常体験者の偏見 (文春文庫)
(1988/08)
山本 七平

商品詳細を見る


山本七平の本は面白い。半年ほど前に、空気の研究を読んだ。書評を書いている内に、書くことが多すぎて、「これは、もう一回精読してからちゃんと書こう」と思いお蔵入りさせている。

ある異常体験者とは、もちろん、山本七平自信である。氏の戦争体験で見聞きしたことと、世論の乖離を論じ、自分のことを異常体験者と称しているのである。

本書には12の論文が収められていて、独立しているが、内容的に繋がるように出来ている。

前半は新井宝雄の主張に論駁を加える感じで進む。新井氏は「強大な軍事力を有した日本軍は中国の民衆の燃えたぎるエネルギーに負けた」と書いているが、山本氏は、それは嘘だ、という。というのも、当時、もっとも強かった軍隊は何十年も内戦を繰り返していた中国軍で、日本軍は赤子のようにあしらわれていた。また、日本の鉄砲や大砲は粗悪品の極みで、到底戦争どころではない、と。その事実を無視して、「民衆の燃えたぎるエネルギーによって負けた」とやれば、まったく、戦前の大和魂と同じであると。根拠や分析を無視して、精神論等という不確定なもので論じるのは、戦前の謬りを繰り返すだけである。

余が面白かったのはアンソニーの詐術。アンソニーの詐術とは扇動の仕方である。日本中がどのように扇動されて、あの戦争を行い、また敗戦後は、どのように扇動されて反日的言動を繰り返しているかがわかる。

今の日本への警鐘とも受け止められる部分も多い。平和な世の中というものはどんどん純化していくものである。そして、単純化する。簡単にいうと、社会のプラットフォームが堅固になり、思考力を使わなくても暮らしていけるようになるのである。そんな社会と真反対なのが戦場である。戦場では「敵が来た!」とは絶対に言わないらしい。「敵影らしきもの発見、当地へ向けて進撃中の模様」というらしい。この違いは、事実と判断の違いである。「戦場では事実と判断を峻別しなければ生きていけない」のである。文明は、判断と事実の乖離を少なくする。単純な言葉で言えば「便利」にする。判断の後、分析と決断やらを省いてしまう。その結果、人は真っ当な思考を失う。山本氏はそれを懸念している。

その他に、日本人の欠陥として、「可能か不可能か」の探求と、「是か非か」の議論が区別できない。余に言わせれば、益か不益かの区別も出来ていないと思う。あるものが「非」であるとすれば、それを非難することが、損であろうと、不可能であろうと、断固として「非」は許すまじの態度で挑む。その逆もまた然り。大和民族の美徳でもあるが、同時に、海千山千の世界を相手にするには厳しい。

占領軍数万人で、何千万人も住む日本を支配することは不可能なのだ。そこには、日本人が進んで支配を受け入れるシステムがなければいけない。日本がどのようにして、マッカーサーに支配されたかが縷々述べられている。

終章の一億人の偏見では、山本氏の偏見から、文字通り、日本国民の偏見に移る。我々は、物事を偏見を持たないようにして見よう、と心がけている。しかし、そのようなことは現実には不可能なのだ。哲学的に言うと、主観は永遠に主観であり、客観というのは、客観的に見ようと意図した主観に過ぎないと言うことである。古典ギリシャ語には偏見と同義の言葉はない。逆に言えば、公正中立もまた存在しないのである。日本人はあたかも、公正中立、偏見を持たないこと、が存在するかのように考えているようだが、そんなものはないのである。古典ギリシャ語には、「好感的偏見」と「嫌悪感的偏見」という言葉ならあるそうだ。人間はこの二つの内、どちらかの偏見を持って物事に挑む。先入観や誤認もある。間違えて欲しくないのは、「人間は偏見を持っているのだから、偏見をもって物事に挑んでいいのだ」と言っているわけではない。「偏見を持っていることを計算に入れて、物事に挑むのがいい」と言っているのだ。

オススメ度: レベル4.5
FC2 Blog Ranking

《参考・関連図書》

「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))
(1983/01)
山本 七平

商品詳細を見る

日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条 (角川oneテーマ21)日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条 (角川oneテーマ21)
(2004/03)
山本 七平

商品詳細を見る

日本人と中国人―なぜ、あの国とまともに付き合えないのか (Non select)日本人と中国人―なぜ、あの国とまともに付き合えないのか (Non select)
(2005/01)
イザヤ・ベンダサン山本 七平

商品詳細を見る

テーマ : 買うべき本 - ジャンル : 本・雑誌

【編集】 |  21:58 |  思想 社会科学  | TB(0)  | CM(0) | Top↑

コメントを投稿する

URL
コメント
パスワード  編集・削除するのに必要
非公開  管理者だけにコメントを表示
 

この記事のトラックバックURL

この記事へのトラックバック


 | BLOGTOP | 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。