五段評価! タモヒトの読書日記
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2009.01/13(Tue)
14歳からの社会学 ―これからの社会を生きる君に
![]() | 14歳からの社会学 ―これからの社会を生きる君に (2008/11/11) 宮台 真司 (みやだい しんじ) 商品詳細を見る |
名著である。余は数えて30歳であるが、新鮮な感覚で読んだ。本書はある意味、夢や希望を否定している。この部分が中学生に届くかは疑問である。余ぐらいの年齢になり、世界の不条理を知り、思い通りに行かないことを繰り返して、初めて、この諦念を理解できるのかも知れない。おそらく、余が中学のときにこの書を読んだら、「余は他の者どもとは異なる」として、聞く耳持たなかったのではなかろうか。また、良く背伸びをしていたので、対象年齢14歳の本などは手にしなかったのではなかろうか。
本書は、社会と人間の関係を説く。NLP的に言えば、社会という前提が人間というマシーンにプログラムを埋め込んでいくとでも言おうか。例えば、我々が人を殺せないのは、殺してはいけない決まりがあるから、とか、殺してはいけないと理解し納得しているからでもない。殺せないのだ。殺せないように社会で育ってきたからだ。その社会の仕組みというのは、他者がいて、初めて自己の承認を得られる。他者を消すと言うことは自己の承認を消してしまうこと。故に、社会から切り離された、例えば神戸の「酒鬼薔薇聖斗」や秋葉原の「加藤容疑者」のようになって、初めて人を殺せるようになる。そうでなくても、死刑執行人や兵隊は社会的容認があるので人を殺すことが出来る。
「行為功利主義」と「規則功利主義」の所も面白い。というのも、余は今これを痛感している。まさしく、社会が移り変わる境目のような気がしているのだ。
著者はJR芸備線の路線内に勝手に踏切を作って威力業務妨害で逮捕された老人の例を出す。この老人は畑に農作業に行くに当たり、線路を渡らなければいけないので、踏切を作って欲しいとJRに要請していたが脚下。野菜を載せた手押し車で迂回するのは大変だからと、自分で踏切を製作。近所の人も喜んで使っていたら、ある日突然逮捕。
踏切を作ることによって、老人が幸せになれるんだから、法律なんて関係ない、と言うのが「行為功利主義」。いや、規則は規則なので守らなければならない、規則を守ることにおいてのみ、人々は幸福になれる、というのが「規則功利主義」
もっと卑近な例で言うと、最近飲酒運転がやたら厳しい。一昔前の田舎では、飲酒運転は当たり前だった。都心のようにバスや電車だタクシーだと代替輸送機関が田舎には存在しない。車で移動するしかないのだから、飲酒運転は見逃されていた。
駅の付近に自転車を駐めるのも、最近は御法度。昔は平気で駐められていたのに、今では行政がトラックに積んで持って行ってしまう。
余も、規則功利主義の立場に賛成であるが、ここに落とし穴があるような気がしてならない。確かに、自転車が溢れて通行の妨げになる所もある。最初はそういうところがターゲットとして持って行かれてた。しかし、「あそこは駐めて良くて、ここは駐めちゃ駄目なのはなぜだ」という話になり、自転車を駐めておいても邪魔にならないところまで、自転車を持って行かれてしまうようになった。幸せになるために作ったはずの規則が、我々の利便性を奪う結果となる。この世はどんどん住みにくくなる。
理想と現実の章では、著者は、仕事に生き甲斐を感じて自己実現できる人間なんて一握り。仕事は仕事と割り切って、その他のことに喜びを見出した方が人生楽しく暮らせるのではないか、と説く。昔は仕事と生活が密接に結びついていた。近所には商店街や職人がいて、それを見て仕事を決めていた、が、最近はシャッター街。地域と仕事は切り離されてしまっているのに、仕事での喜びが、そのまま地域で承認されることはありえない、と言うような意味か。また、働けば豊になれるという幻想も消えてしまった。
著者はこう言う。
「人々に生き甲斐を与えるために仕事があるんじゃない。社会が必要とするから、仕事をしてもらわないと困る人々がいるから、仕事がある。みんなが仕事に「生き甲斐」を求め始めれば、多くに人は「生き甲斐」から見放されてしまう」
挙げ句の果てにこう止めを刺す。
「君に向いた仕事なんてあるの?」
「自由」への挑戦の章では、自由を選択する能力、選択肢を探す能力の重要性を説く。自由の本質へ迫る議論をへて、社会がどのような自由な意志によって成り立つのかに考察を加える。パーソンズを例に出し、「人々は自発的な意志によって、社会を作る。その社会が、人々に自発的な意志を与える。このようにして、社会はぐるぐる回っていく」そこには、善悪はない。社会が変われば善悪も変わる。善悪の観念もその社会の中でぐるぐる回る。
だからこそ、芸備線の例のように、社会が変わる兆しは、面白くもあり、チャンスでもある。と余は思う。我々が無意識に暮らしている社会は、ひとたび疑念を抱けば、謎だらけである。この書は、そんな世の中の不思議に対して、ヒントをくれることだろう。
オススメ度: レベル5
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